2020年8月27日、カステックス仏首相は、9月の新学期に備えて、コロナの現状と今後の施策についての会見を行いました。
基本姿勢は「ウィルスと共に生きる」で極力ロックダウンを避けるための施策を行い、開かれた新学期を迎え、働き、学び、文化を楽しみ、気晴らしもする、「生き続ける」べきと言うものです。
" 現状 "
1. 基本再生産数(Basic Reproduction Number : R0)
◻8月27日;おおよそ1.4
◻第1波ピーク時;3
◻ 5月;0.7
" 感染件数 "
◻ロックダウン終了間際; 1000 件未満/日
◻8月27日現在 >3000 件/ 日
但し5月よりも8月の方が検査数が増加していため、感染数も増加している要因もある。
テスト陽性率
◻ロックダウン終了時;1%
◻8月27日;3.7%
10万人あたり感染者数
◻8月27日;
フランス39人/10万人、
イギリス、ドイツ 約20人/10万人、
ベルギー;60人/10万人、
オランダ40人/10万人
cf;東京9月2日 9.21人/10万人、沖縄;12.18人/10万人
但し、分母である検査数/検査対象基準に違いがあるため、単純比較はできない。
検査数
◻フランス8月27日84万件/週、9月中に100万件/週に達する見込み
◻日本8/25から8/31まで14万6499件(フランスの17%強)
フランスの検査数は日本の5.7倍
現在、フランス全土のラボと呼ばれる検査機関(フランスは血液検査、尿検査などの検査は、医師の処方箋に基づき、本人の希望するラボラトリーと呼ばれる看護婦がいる検査施設で行う。ちなみにレントゲンも処方箋に基づき、レントゲン医にしてもらう。)でPCR検査が可能。
検査の優先順位は、
1. 医師が検査必要があると認めた人
24時間以内に検査が行われ、検査結果が検査から24時間以内に判明
2. 感染者とコンタクトがあったなど感染リスクがある人(医療従事者などを含む)
検査結果は検査から24時間以内に判明。
3. 特に症状、感染者とのコンタクトはないが、レッドゾーンから戻ってきたなど、本人の希望によるもの。
感染傾向
20-30歳代の陽性率6%で平均を上回っているが、入院に関する統計に劇的な変化がないことから、無症状感染者が数多くいることを示唆している。
8月27日入院患者数は800人超(日本1万3006人同時期、療養者を含む)
地域的差異
10万人あたりの感染者数が50人を超えた21県が現在レッドゾーンにカテゴライズされ、県知事が政府の防止策に加えて補助策を加えることができる。
ちなみに3月4月時点のピーク時の10万人当たりの感染者数は1000で現在の20倍。
結論
緊急に対策を講じる必要性があり、対策を講じる際の原則は「ウィルスと共に生きる」。
ウィルス活性化をストップさせ、感染しないよう身体の安全を確保するための防御策(マスク、ソシアル・ディスタンシング、定期的な手洗いの励行)を行い、ロックダウンを避けるために、出来る限りの施策を講じる。
対策を講じながら、極力閉鎖は行わず、働き、教育し、教養を高め、気晴らしをする、つまりは生き続ける,、生活し続けるべきというのが基本的な考え方である。
なぜなら、活動が停止すればするほど、今回の経済的、社会的危機は拡大し、人に与える影響は劇的なものとなる可能性がある、また活動が停止し続けると、極右の活動が活発になる可能性があることも示唆した。
ゆえに、対策を講じながら、活動再開しながら、すべての起こりうる仮説を想定し、備える必要があるとした。
政府側の準備しているもの
1. 再ロックダウン計画。連帯保健省管轄下で、地域的なもの、全国的なものの準備が万一に備えてできている。
2. 医療システムの準備;第2波が万一発生した場合に備え、病床、マスク、薬品、集中治療の準備はできている。
3. 集中治療用病床は5月ピーク時に7000床だったが、現在は5000床プラスの12000床を確保。
しかしながら、ロックダウン回避と、集中医療室に患者があふれる事態を回避するために、なすべき措置をすべて行い、極力回避することが目的。
国民全員が責任感を持ち、この目的遂行に参加する必要があると各国民の参加を呼び掛けた。
対 策
1.感染防止策
(1)マスクの着用。11歳以上はすべての閉められた空間で、複数の人間が存在する場所での着用を義務化する。(例外についてはARSが決定)
マスクは雇用主が用意。貧困家庭に関しては政府が無料配布、病人で特別なマスクが必要な場合は処方箋と引き換えに無料入手が可能。
(2)ソーシャルディスタンシング 1m
(3)定期的な手洗いの励行
2. 伝染の連鎖を断ち切るための3つのステップ;テスト、トレース、陽性時の隔離そして濃厚接触者の断定と検査 携帯アプリ "stop covid¨"
3. 地域的アプローチ
疫学的シチュエーションの悪化が疑われた際には、現場に即した、的を絞った対策を迅速に段階的に講じる。(全体的ロックダウンを避けるため)
必要に応じて、県知事が政府施策の強化策を取ることが可能。
首相の言葉を借りれば、
「危機とその管理は単に対策、データ数値、体制だけではなく、危機はまず連帯を通して対処され、解決されなければなりません。それぞれの状況を考慮し、聞く耳を持つこと、人間らしくあること。
クライシスの影響を受けている個人、地域を考慮しなくてはなりません。
私が主導する政府は、社会的パートナー、地方自治体、市民と団結し、協議し、対話する方法を模索し、今後も模索して参ります。
これらの価値観は、大統領が言うように、衛生的、経済的、社会的危機への一番有効な解毒剤であることに疑いの余地はありません。」
そして、大統領要請に応じて、このクライシスからの教訓として、現行の医療システムの改善を行い、“Ségur de la Santé” という契約が7月に締結され、その結果、医療従事者の給与の見直し、病院施設の改善、15万ポストの創設、組織改善、医療へのアクセス強化など、医療セクターの改善が行われています。
9月3日付けで経済施策も発表されましたが、そちらはまた次回。
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