フランスの有機食品市場について

3月、農林水産省は食料や農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーション(技術革新)で実現する「みどりの食料システム戦略」の中間まとめを発表した。

2050年までに耕地面積に占める有機農業の比率を25%(100万ヘクタール)に拡大する目標を示し、5月中に決定する。 日本の有機農業の取り組み面積が現状0.5%(18年時点)ということなので、野心的に進めていくことが期待される。


 では、農業大国フランスのオーガニック・有機農業はどうなのだろうか?

2021年3月のオーガニック食品に関するレポートが出されたので、参考にして現状をお伝えしたいと思う。 




フランスのオーガニック耕地面積:

230万ヘクタール。日本の拡大目標の2倍超、東京都の面積の10倍以上が有機農業に使われている。耕地面積は過去5年間で2倍に急拡大し、全耕地面積の8.5%に相当する。 

2022年までに耕地面積をさらに拡大し、フランス国内の全耕地面積の15%(405万ヘクタール相当)を有機農業に転換させることを計画中だ。 

また、2022年までに学校食堂などの公的レストランの20%を有機農業生産物で賄いたいとしている。


オーガニック市場規模:

2019年、有機食品市場は、年間14億ユーロ以上の成長を遂げ、売上高は119億3000万ユーロに達した。2018年と比較して+ 13.5%の成長を記録。 

フランス人1人当たりの有機製品の平均購入額は178ユーロ/年。

 一番消費されているのは、果物と野菜、乳製品、肉、シーフード、惣菜、冷凍食品、パンで、全体の57%を占めている。 

オーガニック商品の中で+ 15%を超える成長を見せているのは、加工製品。 

31%の売り上げ増の冷凍食品(特にアイスクリーム、シャーベット、ピザ、野菜)

24%増のビール 

20%増は生卵で、オーガニック商品の中で一番消費されている食材である。 

購買者層はここ1年で新規に15%増。特に女性17%増、若者(18歳から24歳)21%増、経済的に余裕のある層20%増の増加が顕著である。 


購買動機;

これら新しい消費者が有機食品を買い始めた理由 : 健康のため61%、環境保全48%、普段買い物をする場所でオーガニック商品が買えるようになったから39%、エシック、社会的な理由38% となっており、特に18歳から24歳の若者の62%は環境保全を理由にあげているのが特徴。 

有機商品を買う場所は、スーパーなどの大手販売店が74%、地元生産者から直接購入が26%となっており、現在5万人いるオーガニック農業従事者のうち半分が、自分の農場などで直接販売をしている。

 ファームなどで直接購入する消費者数が増えていることから、スーパーよりも小規模生産者から買いたいと思う消費者が多くなっていることがうかがえる。 


有機食品のイメージ;

86%のフランス人は有機食品を購入することは環境保全につながっていると考え、80%のフランス人は健康に良いと考えており、有機食品購買者は、生産者が正しく利益を得られること(フランスでよくある、乳製品や肉類の大手販売店による買い叩きのようなことがないようにという意味だと思う)を重視するというアンケート結果も出ている。 


食生活、消費行動に関するアンケート結果

この3年間で消費行動、食や料理に関する傾向に変化がありましたかという質問に52%のフランス人がハイと答え、変化があったとする項目は主に; 

無駄や廃棄を避ける 56% 

生鮮食品を買う 57% 

季節の食品を買う 57% 

地元産の食品や、輸送距離が短いものを買う 59% 

料理をする 55% 

プラスティックや包装を少なくする 42% 

有機食品を買う 40%

品質ラベルのついた商品を買う 23%

環境保全を考えて作られた製品を買う 38% 

輸入製品を買うことを制限する 37% 

製品の成分、原材料を毎回見る 29% 

包装されていないばら売りの商品を買う 31% などであった。


 料理をするは8%上昇で、特に35歳未満にその傾向が大きく、これはオーガニック消費に関係ない全体の傾向であり、無駄や廃棄をしない、生鮮品を買うようにする、季節の商品を買うようにする傾向と呼応している。 

2020年は地元産の生産物、輸送距離の短い生産物を優先的に買うが59%で一番大きな傾向となっており、生鮮食品を買う、季節の食品を買うとともにトップ3の傾向であった。 

つまり、フランスの有機食品消費者は、地元、地元の属する地方、国内で生産されている食品を優先して買っていることがわかる。

 2007年から、私も完全オーガニック+グルテンフリー生活を数年経験し、その後もほぼオーガニックな生活を10年以上したことがあるので、この15年での変化の大きさに驚いています。

 2007年当時、オーガニック(フランスではBIOと呼びますが、)を実践しているのは、かなりの変わり者(笑)という目で見られました。

私は小さかった子供が夜中に原因不明の腹痛を何度も起こし、知り合いに勧められて始めたのですが(のちにグルテン不耐症だったことが判明、今は改善しました。)、リヨンはまだしも、地方に行くと、当時フランスでオーガニックが一番進んでいたのはドローム県だったのですが、同業者からの嫌がらせや脅迫にあった生産者もいたそうで、レストランなども有機食材を使っていることを隠すような状況でした。


Yann Arthus-BertrandNicolas Hulotなどの、食の安全や環境問題を報道してくれた先駆者たちのおかげで、人々が食の安全や環境保全に気づき、また、大手スーパーが参入し買いやすくなり、まず子育て世代の人々が、オーガニックに移行していったように思います。

私も一人でさせるのは可哀想なので、子供に付き合ってグルテンフリー、オーガニック生活を初め、1カ月で、頭痛薬と胃腸薬が必要なくなり、胃腸も丈夫になりました。

2017年くらいから、制限を緩め、ベースはオーガニックにするものの、徐々に普通の食生活に戻しました。

そのおかげか、もう15年近く鎮痛剤のお世話になっていません。

ただし弊害もあり、100%オーガニック生活だった頃は、感覚が鋭くなって、普通のケージで育てられた鶏肉や卵が臭くて食べられなくなりました。

 東京に暮らし始めて体調を崩し、今はお米などの食生活のベースになるものはオーガニックに戻し、自分で発酵食品を作っています。

 「どこどこのなになに」というブランドも大切ですが、「誰がどのように作ったか」という生産上の透明性も重要ではないでしょうか? 

まずは生産地で、形や色などによる選別廃棄をやめ、ばら売りができるようになると、有機農業をしても無駄が少なくなるのではないかと思います。 

また、加工品には原料記載表示をつけ、こちらも透明性をきちんと確保して欲しいと思います。

以上私見も交えて、フランス有機市場のお話でした。

下;右がヨーロッパ規格のラベル。左がフランス規格の有機商品ラベル 

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