新型コロナウィルスワクチンの行方

2020年5月14日付けで、フランスの大手製薬会社グループ・サノフィのCEOポール・ハドソンが、サノフィが抗COVID-19(新型コロナウィルス)ワクチンを開発した場合、フランスではなく、まず米国での使用が優先されると宣言し、物議をかもした。

フランス大手製薬会社で、ワクチンでも有名なサノフィの目標は、ここ18〜24か月以内に抗COVID-19 のワクチンを開発することである。

サノフィ最高責任者のポール・ハドソンによれば、「米国政府は、他国に数日から数週間先んじて、最大量のワクチンを予約注文をする権利」を持っており、それは、研究上のパートナーとして、サノフィと「リスクを共有」しているからであると語った。

フランス国内での抗議に対し、サノフィ・フランス社長のオリビエ・ボジロットは、同水曜日にLCI上で、「ポール・ハドソンの発言内容は、当該記事の中で少しデフォルメされている。」と述べた。

オリビエ・ボジロット社長はまた、BFMTVで「目的は、ワクチンが米国、フランス、ヨーロッパにおいて、同じように入手できるようにすることである。」と請け負った。

サノフィ最高責任者のポール・ハドソンの発言根拠には、サノフィが、2月に米国保健省の管轄下にあるバルダ(Biomedical Advanced Research and Development Authority)と協力協定を締結し、バルダはすでに、サノフィが英国のGlaxoSmithKline(GSK)と共同で行っている、2つのワクチンプロジェクトのうちの1つに、約3000万ドルを投入していることがある。

この研究は、既存のDNA組換え技術を使用してCovid-19に対してポテンシャルなワクチンの開発を早めようというプロジェクトである。

また、米国はさらに最終的には、数億ユーロの追加投資の用意があり、またワシントンでは、研究を可能にする規制手続きも、迅速に整えてられているとサノフィ側は言う。

ヨーロッパに関しては、

「EUも、抗コロナワクチンを迅速に使うことが出来るように、このように効果的に我々を援助をしてもらわないといけない。」とサノフィ・フランス社長のオリビエ・ボジロットと語り、CEOのポール・ハドソンも、「ヨーロッパ人もアメリカ人同様にサノフィとリスクを共有して欲しい」と語った。

サノフィの経営陣がEUの対応の遅さを嘆くのは、これが初めてのことではない。

ポール・ハドソンはすでに4月の終わりに、電話会議でアメリカ人が優先権を与えられるかもしれないと言っていた。

「ハドソンはヨーロッパにワクチン開発に関する協力体制がないこと、特に委員会に取り組み姿勢がないことを嘆いていた」と専門メディアは要約する。

欧州委員会は、木曜日のサノフィCEOポール・ハドソンの言葉に応じ、

「Covid-19ワクチンは公共財でなければならず、ワクチンへのアクセスは、公平かつ普遍的なものでなければならない」と委員会のスポークスパーソンであるStefan de Keersmaeckerは述べた。

同様に、フランス政府ならびに国会議員も反意を表明した。

発言のなされた5月14日昼に、フランス国首相エドアール・フィリップはtwitter上で、サノフィ取締役会会長のセルジュ・ヴァンベルグ に電話し、サノフィのワクチンが開発されたら、フランス国内で流通させることを確約してもらったと報告した。

フィリップ首相のすぐあと、今度はマクロン大統領が参入し、

「この数か月間に行われた努力は、このワクチンが世界の公益であり、市場法則の一部であり、(特定の誰かにのみ使われるものではないの意味)誰もが同時に入手可能なものでなくてはいけないということを示している」とし、

「大統領をはじめ、そのために働いてきた人々はこの言葉(フランスで入手可能であることを保証すること)に感動した」と付け加えた。

大統領府はまた、参加者の詳細を明かすことなく、来週の初め(今週)にサノフィとの「ハイレベルの会議」を開催することを発表した。

社会党の一等書記官、オリビエ・フォール、オー・ド・フランス地域の大統領、グザビエ・ベルトランなど多くの国会議員たちは、サノフィ社がすでに、研究税額控除(CIR)と競争力雇用税額控除(CICE)の形でフランスで数千万ユーロの税額控除を受けていることを示唆し、「国営化の可能性にさらされることなく、フランス衛生主権(保健省の主権と思われる)にフランス企業が対抗することはできない」とオリビエ・フォール議員は語った。

一方、サノフィが開発中のワクチンプロジェクトの現況はというと、

欧州医薬品庁は1年以内にワクチン完成の可能性があることを示唆したが、それはかなり楽観的な見地からのものであると付け加えた。

サノフィ提唱目標は、18〜24か月以内にワクチンを使えるようにすることで、サノフィ・フランス社長のオリヴィエ・ボジロットによれば、通常であれば「10年かかる」ものだという。

現況の試験管での動物実験の段階から、年内に人体テスト段階に入ることを目指しており、開発のすべての段階を加速し、迅速なワクチン使用を確実なものにする努力をしているという。

開発されたということと、誰に使われるのかというのは、また別の問題という事のようです。

日本はどうなるのでしょうか?ワクチンの完成と自国での使用あるいは、諸外国の製薬会社が日本に先んじて完成させた場合の、日本での使用を確実にする手立てを日本政府にとって欲しいと思います。

本文は仏紙ル・モンド、ル・パリジアンの要約です。


きょうのフランス France Aujourd'jui

きょうのフランス。 フランスからの話題をお届けします。 政治、経済、環境、ワイン、食など。 私のフィルターを通して、面白いと思ったことをお伝えします。 ホームページはこちらをご覧ください。 https://grapelyon.wixsite.com/info

0コメント

  • 1000 / 1000